ブログでけなすための本は定価を支払うのがもったいないのでブックオフで買うようにしている。というわけで今日はブックオフで1,000円(高い!)で入手した「自治体経営革命」(メタモル出版)について書く。まず最初の感想として、読んでいてこれだけ疑問が沸き起こる本も珍しいと思う。疑問点は以下のとおり。
・「選挙で市町村長と議員に委任するとはいえ、基本は住民の決定です」?
違う。現代行政の基本は選挙で選ばれた市町村長と議員と役所の決定である。基本が住民の決定というのは古代ギリシャの話である。なぜ市町村長や議員が基本かというと、「フェデラリスト」第63篇をパクって言うと、首長と役所と議会を腐敗させるよりも、住民そのものを腐敗させる方がはるかにやさしいから、となる。
・「まちづくりの主人公は住民」?
そんなことになれば、地域の顔役や市民活動家のような声のでかい連中ばかりが得をすることになる。NPOの活動支援?彼らは人様の税金にたかっているだけだ。自分で資力のある者を説得して資金を集める、という努力は一切しないし、なおかつ困ったことに自分たちは世のため人のために活動しているのだから補助金をもらって当然の存在と思っている。馬鹿げた事態をさらに推進するつもりなのか?だいたい私は「まちづくり」「ものづくり」という言葉が大嫌いだ。人様の税金使って成功の見込みのない事業をやっています、という雰囲気がありありと出ている。
・「自治基本条例は自治体の憲法」?
自治体の長期総合計画の上位に自治基本条例が位置するというのはわかるが、他の条例の上位に位置するとはどういうことか?法令上そういう定めがあるのか?利害関係者から他の条例との関係で訴訟を起こされたときに、他の条例の上位に位置するという主張が通用するかどうか検討したことがあるのか?
・「地方自治の本旨に反するものは国法といえども違憲」?
よくわからない。具体的にはどういう事例があるのか?だいたい憲法92条はどう解釈していいかよくわからない条文で、地方自治の本旨が何を指すのか定説はない。
・「住民自治条例は行政側で条例案を用意するべきものではありません」?
では誰が作るのか?住民がつくるのか?サラリーマンをはじめ一般の市民は日常生活に忙しくて行政にかまっている余裕などないとは、著者自身が本書の冒頭に書いている。それとも、役所のあらさがしをするしか能のない一握りの現代版活動家に自治体の主導権を委ねよというのか?
・「IT時代の電子市役所」?
「役所での手続きが自宅のパソコンで24時間できる」については、本人確認が必要な場合は?手数料を支払う場合は?という疑問がある。理想としては良いが今の自治体にそれを実現できるノウハウも人材もない。ワンストップサービスとマルチアクセスサービスにいたっては何が電子市役所と関係があるのかさっぱりわからない。
・「納税組合をもっと国に働きかけろ」?
本書に記載の通り、すでに事務費部分以上の補助金については違法判決が出ている。何を時代遅れのことをいっているのであろうか。この本のタイトルは「自治体経営革命」のはず。納税組合などというムラ組織に頼って胡散臭い補助金を支出していないで、ビジネスライクに差し押さえすればいいだけの話である。
・(談合問題で)「業者を向くか住民を向くか問われる自治体の姿勢」?
業者=住民だから自治体は苦労している。「税金を払ってくれる住民の職場を役所がつぶしていいのか」ということでどこの自治体も頭を抱えているのだ。大見得きって問い詰めることのできる問題ではない。
・著者の意見の根本となる思想が見えてこない。現代リベラリズムなのか、リバタリアンなのか、それともcommy系列なのか?また、「行政の公権力の行使とは何か?」という基本中の基本についても何ら記載がないのはいったいどういうわけなのか?マスコミが新聞に書きたてた底の浅い問題しか書いていない。
・「道路は地域の生命線」?
繰り返して言うようだが、こういう主張をする本のどこが「自治体経営革命」なのだ?地方の道路整備のせいで日本の経済成長が低下すれば国民全体が迷惑する。それとも、どうせ衰退するならば都会もろとも・・・と考えているのであろうか。
・「中心市街地活性化はなぜ必要なのか」?
とタイトルに書きつつ、なぜ必要なのか答えを全く書いていない怪奇現象。(だんだん書くのがつらくなってきた)
と思いつくままに書いてみた。今までこのブログでは役所と公務員の悪口ばかり言ってきたが、上に記載した疑問点は数年間公務員として勤務した職員なら誰でも気づくような話ばかりである。なお、本書には『「インターネットに公開したのに反応がない」ということは消極的ながら賛成と同じことになります。公開された以上反論意見があれば述べるのは当然で・・・』と書いてあるので、当然ながら反論がなければ私の意見に賛成したと見なします。