2008年6月24日火曜日

未来新聞

New New New York タイムズ 2208年6月24日

鎖国政策を続けている東洋の島国日本に、私は100年ぶりに上陸する外国人となった。1億人の人口を狭い耕地で養うため、この国では国民のほとんどが農業に従事しており、母国アメリカの基準では人が居住しないような急峻な山中にも、数多くの集落と田畑が存在している。人々は肌の色が妙に白い私に対しても親切で朗らかではあるが、生活は貧しく、彼らの先祖が500年前にそうしていたのとほぼ同じ生活水準で暮らしている。彼らは非常に利発で好奇心が強く、私に対して世界の国々のことをあれこれと質問したが、それは決まって周囲に他の日本人がいないときに限られた。彼らの社会では独自の意見や好奇心を持つことは不道徳と考えられており、人前であれこれしつこく質問したり演説したりすると、村の暴力嗜好のある若者たちに誘拐され、額に「KY」という刺青を入れられるそうだ。なお「KY」が何を意味するかは今となっては全く不明である。

200年前、世界的には「先祖がえり運動」と呼称されるこの国独特の運動で、それまで世界最先端を突き進んでいた日本の経済と科学技術は一気にアフリカ最貧国レベルにまで急落した。食糧難を煽る政府とマスコミにより多くの都市住民が田舎の農地を買い求め移住したためだ。私が取材した政府高官タロー・スズキ氏は「先祖がえり運動」についてどう思うかという私の質問にこう答えてくれた。
「国民が都市生活を放棄したため日本の二酸化炭素排出量は90%削減された。わが国は地球温暖化防止のために最も貢献した国のひとつである。それに人々は質素な食生活のため体が丈夫になり、平均寿命も以前までと大して変わりはない。そしてなによりも、年長者を敬い、友人知人には誠意をもって接し、国家には忠実である、という日本古来の美徳が復活したことは大変素晴らしいことだ」
地球温暖化という言葉は歴史学のクラス以外では初めて聞いた言葉であるが、日本人の官僚は非常に面子を重んじるということを事前にレクチャーされていたので、賢明にも敢えて指摘はしなかった。

日本の法律は非常に複雑緻密でまさに法律の芸術である。国民は朝昼晩の食事の内容も、夫婦の夜の営みの回数も政府の規制を受ける。そして人々は互いの私生活を微細な点まで監視しあっており、政府は警察官をほとんど雇うことなく、きわめて低いコストで国民に法律を守らせることができる。比喩的に表現するなら「スパイの生活と奴隷の平和」というところであろうか。このことについて、当事者である国民はどう思っているのであろうか?東京近郊で農業を営むジロー・サトー氏に自由についてのコメントを求めた。
「自由?おめぇ、法律にやっていいって書いてねぇ事をやるのは犯罪だべさ」
この国が国際社会に復帰するのはまだ先のようである。

ジョン・ドゥ reporting from トーキョー.

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