2008年6月21日土曜日

東京までの距離

昨年か一昨年のことだが、妻と娘が東京へ旅行した。まだ幼い娘は、品川駅で大声で泣きはじめ、妻は駅のホームで途方にくれていた。妻の話によると、このとき上品な感じの老人が近づいてきて娘をあやしてくれたそうだ。泣き止んだ娘を受け取って妻が丁寧に礼を言うと、老人は「それじゃ!」とさわやかに去って行った。直後に、スポーツには全く疎い妻に、近くにいたオジサンが教えてくれた。「あれ誰だか知っている?ヤクルトの関根監督だよ」

こんな話は、東京では珍しくもないのであろう。しかし、有名人や芸能人が、すぐ近くに住んでいるということが、東京と田舎の大きな違いなのであって、東京ではテレビでみる世界が現実の世界として実感できる。それは住んでいる者一人ひとりの意識と行動に有形無形の影響を与えるのではないか。

大学受験で東京のホテルに宿泊したとき、テレビでニュースを見て衝撃を受けた。田舎の実家で見ているときには、全国のニュースや世界のニュースなど遠い別世界の話のような感じがしたが、自分の泊まっているホテルからさほど遠くない場所で、このニュースが放送されていると思うと、ただのニュース番組が妙に鮮やかに、そして、何かはっきりと意味を持ったものに見えた。私の人生で、テレビを見ていて衝撃を受けたのは、あの時だけである。

どんなに技術が進歩しても、そして、田舎でも東京と同じ暮らしができるようになったとしても、人々の意識上の距離は埋まらない。我々田舎に住む者たちは、物質的な生活は都会並であったとしても、社会に対する関心や、それに基づいた行動ができるかどうかの点で、東京からは遠く離れた生活を送っているのである。

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